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1993 年度 実績報告書

新しい異常アンチトロンビンIII(ATIII)の分子病理学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 04671529
研究機関熊本大学

研究代表者

岡嶋 研二  熊本大学, 医学部, 講師 (60152295)

研究分担者 坂田 研明  熊本大学, 医学部・附属病院, 助手 (60225795)
キーワードアンチトロンビンIII / 先天性血栓性素因 / 血栓症 / 遺伝子解析
研究概要

先天性血栓性素因を示す2例の異常アンチトロンビンIII(ATIII)の遺伝子解析を行い、ATIIIの凝固制御における分子論的機序の解析を行った。それぞれのATIII遺伝子の全塩基構造の解析から、一例(ヘパリン結合能正常、トロンビン阻害能低下)ではArg393-Hisの変化が認められたが、発端者はこの異常に関して、ヘテロ接合体であった(ATIIIKumamotoII)。この異常分子を精製すると、ヘパリン存在下および非存在下でもトロンビンと結合しえなかったが、ヘパリンセファロースへの親和性はむしろ正常分子よりも上昇していた。この原因は不明であるが、P1部位のArgがATIIIのヘパリンとの親和性に影響を与える可能性が考えられた。このことは、従来から考えられていたが、このタイプのP1部位変異分子の全分子構造が決定されたのははじめてで、この解析結果からはじめて上記の可能性が正しいことが確認された。他の一例(ヘパリン結合能低下、トロンビン阻害能正常)のATIII遺伝子の全塩基構造の解析から、本異常分子はSer116がProに置換されていることが判明し、この置換はこれまでに報告がなく、世界ではじめての異常であることが判明した。発端者は、この異常に関してヘテロ接合体で、ヘパリン結合にSer116が重要な関与をしている可能性が示された。このことはATIIIの化学修飾の結果から示唆されていたエクソン3aでコードされる部分のアミノ酸がヘパリン結合に重要である可能性を実証するものである。また、正常および異常構造に対応するオリゴヌクレオタイドを合成し、ハイブリダイゼイションを行った結果、両親の父親にこの異常が存在することが判明した。また、従来から、ヘパリン結合能低下を示す異常ATIIIでは、ホモ接合体のみが血栓症を惹起すると考えられてきたが、本症例のように、ヘテロ接合体でも喫煙のような血栓症のリスクファクターが存在すると血栓症(動脈血栓症)を併発する可能性が高いことが示唆された。

  • 研究成果

    (7件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (7件)

  • [文献書誌] Arima,T.: "Cerebrad infarction in a heterozygote with variant AT III" Stroke. 23. 1822-1825 (1992)

  • [文献書誌] Okajima,K.: "Antithrombin III Nagasaki (Ser116-Pro):A heterozygous variant with defective heparin binding" Blood. 81. 1300-1305 (1993)

  • [文献書誌] Okajima,K.: "Direct evidence for systemic fibrinogenolysis in a patient with motastatic prostatic cancer" Thromb.Res.66. 717-727 (1992)

  • [文献書誌] Okajima,K.: "Direct evidence for systemic fibrinogenolysis in patients with acquired alpha-2-antiplasmin deficiency." Am.J.Hematol.45. 16-24 (1994)

  • [文献書誌] Abe,H.: "Granulocyte proteases and hydrogen peroxide synergistically inactivate thrombomodulin" J.Lab.Clin.Med.(in press). (1994)

  • [文献書誌] Uchiba,M.: "Effect of nafamostat mesilate,a synthetic protease inhibitor,on tissue factor-VIIa complex activity" Thromb.Res.(in press). (1994)

  • [文献書誌] 阿部弘樹: "検査血液学-血液疾患の遺伝子検査:血液凝固" 臨床病理刊行会、(印刷中), (1994)

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公開日: 1995-03-23   更新日: 2016-04-21  

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