研究概要 |
血小板の細胞膜には10種類以上の糖蛋白(glycoprotein:GP)が同定されている。なかでも、GPIIb/IIIa複合体は血小板1個当たり40,000〜50,000分子存在する最もメジャーな糖蛋白で、フィブリノゲンの受容体として機能する。本複合体は、α顆粒膜上にも存在するが、表面膜のものに対してその機能についてはほとんど知られていない。一方、モノクローナル抗体の結合実験により、血小板活性時、その結合が増加することが知られている。この理由として、α顆粒膜GPIIb/IIIaが放出反応に伴って表面膜へ移動するためと考えられている。そこで本研究では、血小板活性時におけるα顆粒膜GPIIb/IIIaの移動の有無と、その機能、特にα顆粒内フィブリノゲンとの関連について免疫電顕的に検討した。 GPIIb/IIIaは元々表面膜に多量に存在するために、α顆粒膜GPIIb/IIIaのみを識別するには困難が伴うことから、EDTA前処理血小板を用いた。EDTA前処理血小板では、表面膜のGPIIb/IIIaがGPIIbとGPIIIaとに解離するために、抗GPIIb/IIIa抗体で免疫反応した時、GPIIb/IIIaはα顆粒膜にのみ検出された。この血小板をトロンビンで刺激し、α顆粒膜と開放小管系が融合すると、GPIIb/IIIaは開放小管系の膜上ばかりでなく、表面膜にも検出されるようになった。すなわち、α顆粒膜GPIIb/IIIaは放出反応に伴って、表面膜に移動することを確認した。 一方、α顆粒膜GPIIb/IIIaと顆粒内フィブリノゲンの相互関係を知るために、二重染色による免疫電顕法で検討した。トロンビン刺激後、フィブリノゲンはα顆粒膜に沿うように変化し、α顆粒膜GPIIb/IIIaと一緒に分布するようになった。このフィブリノゲンとGPIIb/IIIaの複合体は、放出反応後における開放小管系の膜上および表面膜上でも検出された。すなわち、α顆粒膜GPIIb/IIIaはフィブリノゲンのキャリアーとして機能すると結論された。
|