研究概要 |
慣性核融合においては,高密度のイオンと半縮退した電子系の混合物としてのプラズマが爆縮の過程でつくられ,その中におけるエネルギー輸送などの解析が重要な課題である。 1.このようなプラズマのシミュレーションを行うには,まず,古典イオン系についての精度の良い分子動力学を十分高速に行わなければならない。このため,比較的少数の独立粒子に対して変形可能な周期境界条件を課した等温等積の分子動力学を展開した。 2.電子系による遮蔽の効果をイオン間のポテンシャルが湯川型となることで取り入れて,変形可能な周期境界条件の下での等温の分子動力学を行い,湯川系における構造相転移などが数100程度の独立粒子のシステムでも十分正確に再現できることを示した。 3.一方,電子系に対しては量子力学,量子統計に基づいたシミュレーションが必要である。このための方法として,密度汎関数法を用いた。イオンの配置に対応するポテンシャルの中での電子の波動関数を自己無撞着に解くことが計算の主要な部分となる。ポテンシャルの形状の多様性に対応するために,この研究では有限要素法を採用し,まず,ポテンシャルとして簡単な構造のものに対して,このような計算を行った。また,2.で得たイオン系に対する結果と合わせて,熱伝導・輻射輸送に対するイオン間および電子・イオン相関の効果を求めた。 4.動的なシミュレーションのためには,電子の波動関数の時間発展を求めなければならない。密度汎関数法と有限要素法を用いて,簡単な構造のポテンシャルの中での時間変化を求めた。イオンの運動と電子の波動関数の同時の解析法を現在開発しつつある。
|