研究概要 |
ダンスやバレーなどの舞踊における身体動作を記録するための記法として舞踊譜が利用されている。これは音楽の五線譜に相当するもので,身体各部の動きをさまざまな図式記号で記述する。Labanotationは最も代表的なものである。本研究では,このLabanotationの譜面を画像処理手法により読み取り、これを人間の身体動作の入力のためのサブシステムとして利用した、身体運動処理システムを開発した。 初年度は、このLabanotationの図式記号を直接ディスプレイの画面上で入力、編集するためのLabanotationエディタを作成し、また、舞踊譜認識のための基本的技術について検討した。最終年度である今年度は、舞踊譜の認識システムの中心部分について開発し、さらに、解析により読み取った身体運動や、エディタで入力した身体運動を、グラフィックスディスプレイ上に3次元的に表示するための身体運動シミュレータを開発した。開発した3つのサブシステムにより、さまざまな身体運動の入力と表示、蓄積が可能になった。 Labanotationにおいて使用されている図式記号は比較的簡単な図形であるが、図形の大きさがある範囲で変動し、また、図形の内部にハッチングなどのテキスチュアが存在する場合があるので、これらのすべての場合に完全に対応するのは、予想外に困難である。ここでは、図形の輪郭線に着目した、線分単位の可変テンプレートマッチングの手法を使って、これを解決している。基本的な図式記号はほぼ満足に読み取れるようになった。読み取り不能や読み取り誤りの場合は、エディタにより修正することができる。 また、シミュレータは、Xウィンドウ上でのグラフィックスシステムPEXを利用してインプリメントした。スティックフィギュア、ワイヤーフレーム、サーフェスモデルなどのさまざまなモデル表現で人間の身体を表現することができ、3次元空間内の任意の位置からこれを観察した様子を画面上に表示することができる。
|