研究概要 |
従来,我々はランダムドットステレオグラム(RDS)を対象に眼球運動を測定し,立体知覚解析を行ってきた。しかし,対象として用いてきた白黒およびカラーRDSは単純な視差のものであったり、背景とRDS部のコントラストが良い。いわば立体視が容易なものは主であった。 本研究では、できる限り立体視可能な限界付近のRDS呈示を行い,そのときの被験者の応答結果,および眼球運動結果をもとに、立体知覚解析を行った。主な成果を以下に示す。 1.カラーRDSにおいては、背景とRDS部の明度差が立体知覚の重要なファクターとなっていることが示唆された。 2.左右眼のRDSのドットサイズを変えた場合,細かなドットに対応した点のみが奥行きをもってバラバラと知覚される応答結果が得られた。 3.曲面のみからなる上に凸・下に凹,2種類の馬蹄形状のRDSを用いて、立体視が困難な呈示を各種行い、立体知覚限界での解析を行った。 (1)このRDSによる被験者の注視点は、馬蹄形の稜線部付近を常に注視するという結果が得られた。また、上に凸の方が凹に比べ全体的に知覚が容易で、知覚時間も短いという結果が得られた。 (2)両眼のRDSを90度右回転して,垂直視差による検出を試みた。結論としては垂直視差では立体視は困難であるという結果が得られた。 (3)左眼のRDSのみを3〜15度左右に回転して知覚実験を行った。 外枠が方形状のRDSにおいては、左回転の方が右回転に比して知覚が容易であり、その時の融像可能な回転幅は10度までである。 (5)片方のRDSを下方に移動した場合,その時の知覚可能な下げ幅は視覚にして3度ぐらいである。学習すればこの下げ幅は大きくなる。 (4)左右のRDSを同一方向に回転させた場合,知覚可能な回転角は約30度である。
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