前回、各種近交系マウス精子を凍結保存し、融解後の生存性および受精能を検討した結果、系統によりかなりのばらつきが見られたことを報告した。そこで、本研究では種々の系統で安定した凍結保存成績が得られるマウス精子の凍結保存と凍結精子を用いた体外受精技術系の確立を目的とし、まず、凍結法における種々の要因、すなわち、精子採取適齢時期、凍結・融解速度および精子凍結用保存容器について検討を行なった。1 精子採取適齢時期:3系統の6、8、10および12週齢の雄を用いて検討した結果、いずれの系統においても、8週令以前の精子はそれ以降のものに比べ、有意に受精率が低値であった。2 凍結・融解速度:凍結速度は、室温から-196℃まで、約20-40/minの速度で、十分であり、それ以上緩慢冷却しても、生存率の向上は見られなかった。また、液体窒素に直接浸漬することによる超急速凍結では生存率が激減した。融解速度に関しては、室温で5-7分放置して融解するのがベストであり、37℃の温水中での融解は、精子活力は改善されるものの、受精能は向上しなかった。3 精子凍結用保存容器(セラムチューブ、サンプリングチューブ、ストロー):いずれの保存容器にて凍結保存しても、融解後の精子の受精能には差は認められなかった。以上の結果より、今後は、体外受精技術系の検討、すなわち、受精の場の精子濃度、培養液量などの検討を行なうとともに、受精率を高めるための卵子側からの検討も必要であろうと考えられる。
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