研究概要 |
結晶成長機構に及ぼす圧力の効果は未だ明らかではない。本研究では,成長形、平衡形の圧力・温度・組成依存性の観察により、ラフニング転移、核形成等の圧力依存性を抽出し、さらに実験的に溶解エンタルピーまたは溶解エネルギーの圧力依存性を評価し、前者の後者による説明を試みる。 (1)熱力学的データの測定 試料として単純共晶系をなし、正則溶液を与える二元系を選ぶことにより、(1)結晶を構成する物質の液相および固相の状態方程式、および(2)二元状態図を測定すれば、溶液系の溶解エンタルピー、溶解エネルギーの導出が可能となるとの理論的見通しを得た。状態方程式の測定には試料体積測定可能な圧力容器が必要であるが、現在部品を組み合わせ、またいくつかの加工を加えて、約100mlの容積に500MPaの圧力を発生することに成功した。温度・圧力の制御精度の向上を進めているところである。二元状態図については光学液圧セルを用いて、P^-/m^-キシレン二元系、ベンゼン-トルエン二元系の状態図が90℃,400MPaの温度・圧力範囲で測定された。 (2)成長形の観察 p^-/m^-キシレン二元系について、成長形がファセットを持つ平行六面体の安定形から骸晶へと変化する臨界過飽和度の存在と、その圧力、温度、組成依存性が観察され、二次元核生成頻度の圧力、温度依存性による説明の可能性が示された。ベンゼン/トルエン二元系を試料として,ベンゼンの結晶の成長形のコーナーのラウンドが相転移的に生じることを見いだし、その転移の圧力・温度・組成依存性を観察した。そのラウンドは低過飽和度でコーナーに現われる(010)面のサーマル・ラフニング転移に起因する可能性が示された。 以上の成果を元に次年度で溶解エンタルピー、溶解エネルギーの圧力・温度・組成依存性を導出し、サーマル・ラフニング転移、二次元核生成における圧力の効果を抽出する予定である。
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