研究概要 |
結晶成長機構に及ぼす圧力の効果は未だ明らかではない。本研究では,サーマル・ラフニング転移の圧力依存性が溶解エンタルピーのそれにより説明可能か否かを確かめることを目的とする。 (1)サーマル・ラフニング転移の圧力依存性の観察は成長形(光学液圧セル)、平衡形(サファイヤアンビルセル)の目視観察により行なう。(2)高圧下で溶解エンタルピーを知る為、単純共晶系で溶液が正則溶液をなす二成分系を選び,その結晶成分の液相・固相のモル体積の圧力・温度依存性を測定する。(1)サファイヤアンビルセルによる平衡形の観察は極めて遲いガスケットのクリープのため圧力が変化し、長時間の測定が困難であり、多種類の素材を試みたが、まだ成功していない。液圧セルによりトルエンを溶媒として、ベンゼン及びナフタレン単結晶の成長形のコーナーのラウンドとその系統的な温度・圧力・組成依存性が観察された。各組成で臨界温度Tcが存在し、それ以下ではシヤープ、以上ではラウンドしたコーナーが観察され、またTcは組成(圧力)依存性を示した。このモルフォロジー変化が(過飽和度が十分に低ければコーナーの位置に現われる)小さな特異面の、Tcにおけるサーマル・ラフニング転移の生起に起因するという解釈を、上羽の理論の助けにより、補強することが出来た。ベンゼンとトルエンではTcの組成(圧力)依存性が定性的に異なり、溶解エントロピーの圧力・組成依存性の解明が待たれる。(2)ベンゼン及びナフタレンの固相・液相の状態方程式を測定するための装置は前年度までに組上がったが、装置のトラブルと試料袋の作成に予想外の時間を費やした。最終的に純度の高い金製の袋を試作し、現在測定を試みている。
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