本研究では、結晶化要因が、主として親疎水性を利用した自己組織化力だけであると見なせる両親媒性化合物と言う簡単な系に注目し、自己組織化におけるルール、基本的な原理を明らかにする事を目的としている。 前年度までの研究で、化合物CnAzoCmN^+Br^-の作る膜構造にはH-会合を形成するm-n(〕 SY.gtoreq. 〔)2のグループ、J-会合を形成するm=5のグループ、どちらにも属さないグループの3つがあることがわかっている。また、H-会合グループ、J-会合グループともに、加熱によりJ-会合形態に類似したJ′-会合を形成することが解かっているが、第3のグループについても昨年度の研究で、加熱によりJ′-会合を形成することが解かった。しかしながら、J′-会合構造については加熱時の構造であるため、これまでキャストフィルムや粉末状態の試料についてしか構造情報が得られていない。そこで今年度はJ′-会合形態の詳細な構造を検討するために単結晶構造解析の可能性について検討した。即ち、室温において、これら化合物の単結晶を作成し、単結晶のままで加熱していき、結晶の安定性を調べた。その結果、J-会合グループの単結晶では希にJ′-会合構造に転移後も安定に存在する結晶を見つけることができ、単結晶構造解析の可能性があることがわかった。しかしながら、そのような結晶でも降温時のJ′-会合構造からJ-会合構造への再転移では必ず壊れ、構造解析ができる結晶であることが判っても、直ぐに強度測定を始めないとその結晶を保存しておくことはできないと言うこともわかった。今後は結晶と同程度の熱膨張係数の接着剤を探し、構造解析を進めていく予定である。
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