研究概要 |
本研究では、結晶化要因が主として親疎水性を利用した自己組織化力だけであると見なせる両親媒性化合物と云う簡単な系に注目し、自己組織化におけるルール、基本的な原理を明らかにする事を目的としている。 試料としてアゾベンゼンを含む一本鎖型両親媒性化合物CnAzoCmN^+Br^-を用い、テイル部のアルキル鎖長(n)と、スペーサー部のアルキル鎖長(m)を系統的に変化させ、化学構造と会合構造の相関を調べた。 その結果、(1)m-nz2のグループでは、アゾベンゼン発色団がside-by-sideに平行配列し、分子が互いに入れ子状になったH-会合形態をとること、特に、m-n=2の化合物では単結晶が得られ、X線構造解析によりこの構造の詳細を明らかにした。m-n>2では、キャスト膜などでH-会合形態であることを確認したが、m-n=2から離れるに従って会合形態の中に大きな空間ができ、構造的に不安定となり単結晶には生長しないことがわかった。(2)m=5のグループではアゾベンゼンがhead-to-tailで配列し、分子が膜面に対して約30°傾いたJ-会合形態をとることがわかった。このグループは結晶化し易すく、全ての試料で単結晶構造解析を行い詳細な構造を得た。(3)H-会合グループ、J-会合グループ、それ以外のグループでも加熱により結晶-結晶の転移をし、いずれの場合もJ-会合に似たJ′-会合形態をとる。(4)以上の研究を通して、膜構造形成時のドライビングフォースとしては疎水部と親水部の断面積バランスが一番重要であるが、本化合物の場合には(m,n)のアルキル鎖長の違いにより構造を制御できること、さらに(m,n)の奇遇によっても微細な構造の違いが導れることがわかった。
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