研究概要 |
誘電,強誘電体材料の鉛マグネシウムニオベイトPb(Mg_<1/3>Nb_<2/3>)O_3(ペロブスカイト型構造)化合物は、従来(1)固相法(2)共沈法によって合成されてきたが、常にパイロクロア相が出現し、ペロブスカイト単一相の合成が困難であった.パイロクロア相の存在はこのセラミックスの電気的特性低下の原因となっている.本研究は、アルコキシド法でこの化合物の合成を試みた.平成4年度は、前駆体としてのコロンバイド構造のマグネシウムニオベイトMgNb_2O_6を合成し、その評価をおこなった.その結果、マグネシウムメトキシドとニオビウムイソプロポキシドを同時加水分解することにより調製した無定形物を加熱すると、低温度(510℃-550℃)でMgNb_2O_6が生成し、さらにこの生成物は新しい多形であることを示差熱分析(DTA)、X線回析(XRD)により確認した.新しい多形は陽イオンが乱れたα-PbO型構造であり、格子定数はa=0.5696nm、b=0.4713nm、c=0.5059nmをもつ斜方晶として指数付けされた.さらに840℃以上に加熱すると既知のコロンバイト構造に転移した.平成5年度はさらに高誘電率を得るために鉛を加えた粉体を合成し、焼結体の作製を行った.その結果、原料粉体は非晶質であり、加熱すると約600℃で立方晶パイロクロア相が結晶化した.さらに約780℃で2h仮焼した後、約5重量%の水をバインダーとして添加し、196MPaの圧力で金型成形した.成形体を1000℃、1100℃、1200℃、1250℃で3h焼結した.焼結温度の上昇とともに焼結体の相対密度は92から98%まで増加し、結晶粒径は1から6μmになることが走査型電子顕微鏡により観察された.室温にて測定した誘電率は焼結温度の上昇とともに向上し、測定周波数1kHzで7000から25000に増加した.
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