食品の調理・加工を行う際の加熱の条件が製品に大きく影響し、特に食品の乾燥や焙焼を行う際には赤外線加熱が使用されることが多いが、その有効性に関する理論的データがなかった。そこで、平成4年度の研究において、赤外線加熱の有効性を確認するための実験を行った結果、赤外線加認は食品表面の温度上昇に有効であることを明らかにした。平成6年度においては、その有効性の理由を明らかにするために、赤外線で加熱した場合の食品表面近傍の温度分布を測定し、伝導伝熱で表面から伝熱されたと仮定したときの温度分布と比較する事によって赤外線の浸透の状態を推定した。伝導伝熱で伝熱したと仮定した場合の温度分布を求めるために、食品モデルの熱伝導率を測定し、熱拡散率を求めた。また、薄膜試料を用い分光光度計によって波長毎の吸収の測定を試みた。 食品モデルとして寒天ゲル、コーンスターチゲルおよび魚すり身を用い、放射特性の異なるヒーターで加熱した。表面近傍での温度分布の測定のためには、0.127mmの熱電対を束ねて7mmの間に12点の測定部を持つ測定装置を試作して使用した。熱伝導率の測定にはディスク試料用熱伝導率計を用いた。分光光度計としては、近赤外線分光光度計及びフーリエ変換赤外分光光度計を使用した。 食品表面近傍での温度分布の測定結果と測定した熱伝導率から伝導伝熱で伝熱したと仮定し計算した温度分布を比較すると、測定値は明らかに高い値を示し、赤外線が食品表面に浸透して熱に変わることが推論できた。特に、近赤外線領域において吸収が大きいことが示され、吸収の深さは食品によってことなった。この結果は、分光光度計による測定でも裏付けられた。これらのことより、食品加熱における赤外線加熱の特長は食品表面での浸透によるものであることが明らかとなった。今後、食品成分及び波長による浸透の深さを詳細に測定することが課題である。
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