本研究課題では、種々の調理加工特性のうち、最も基本となる乳化特性と揚げ調理特性に焦点を絞り、酵素的エステル交換反応により調製した新規TG分子種および単一脂胞酸TG分子種などを用いて、TGの分子構造とこれらの特性との関係について解析を行った。 まず、TGの分子構造と乳化特性との関係について解明を試みた。酵素的エステル交換反応と減圧水蒸気蒸留法を組み合わせた方法で大量調製した新規TG分子種および特徴的な脂肪酸組成を有する食用油脂を合計30種類用いて、TGの分子構造と乳化特性との関係を系統的に解析した。その結果、TGの被乳化能は、TGの炭素数の増加に従って増加し、また、不飽和脂肪酸を含むTGの被乳化能は、TGの炭素数よりもむしろ二重結合数の増加に従って増加することを明らかにした。 次に、TGの分子構造と揚げ特性との関係について検討を行った。本研究では、単一脂肪酸TG分子種と食用油脂を用いて、TGの分子構造が揚げ特性(吸油量、脱水量、油切れ)に及ぼす影響について検討した結果、炭素数の長い脂肪酸から成るTG分子種ほど、吸油量と脱水量の立ち上がりが低い傾向にあることを明らかにした。さらに、油切れの経時的変化は、固体脂と液体油の二つのグループに大別され、固体脂の場合、液体油に比べて油切れの量は少なく、短時間で油切れが停止することを見出した。また、固体脂の場合、油切れの量はTGの融点が低いほど多く、液体油の場合、油切れの速度はTGの粘度が低いほど高い傾向にあることを明らかにした。 以上述べたように、本研究で得られた研究成果は、将来、食用油脂の基礎研究および油脂食品の開発に対して有益な知見を提供することが期待される。
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