研究概要 |
生活排水の生物膜法による処理過程において、汚れの補集材として繊維集合体を利用して高性能化をはかるための研究を行った。 汚れの補集材としてポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート及びナイロン6繊維を用い、これらを猿沢池の水に浸漬して水の浄化の程度を調べ、水処理接触材としてポリ塩化ビニリデンが最もよいことを明らかにした。このフィールド試験の結果とよく対応する単純なモデル系を設定するために、繊維と同じ素材の高分子板を作成し、ポリマー粒子を付着させ、画像処理装置を用いて付着粒子数を計数し検討した。その結果、モデル実験とフィールド試験とで汚れの付着速度や平衡付着量に差異は認められず、ポリ塩化ビニリデンの水処理接触材としての有効性はモデル実験においても明らかに認められた。 モデル実験で得られた結果は、界面電気現象に基づいて説明することはできなかったが、高分子板の表面自由エネルギーの極性成分の大きさと関係していることが示唆された(油化学,41巻,12号に成果掲載)。 そこで汚れ付着現象を支配する要因を詳細に検討するために、上記の高分子板と粒子を用い、さらに液体の表面自由エネルギーの極性成分の大きさを変化させるために水にエタノールを混合し、付着実験を行った。このモデル実験により、排水処理用汚れ補集材と汚れ粒子の表面自由エネルギーの極性成分、液体の表面自由エネルギーの極性成分の大きさが相互に関係していることが明らかとなり、汚れ粒子別に補集材と液体の表面自由エネルギー極性成分をパラメーターとして等付着量マップを作成できた。また、液体中での粒子と補集材のゼーター電位を考慮すると、系の自由エネルギー変化に基づく現象として、汚れ付着現象を統一的に説明できることが明らかとなった(J.Adhesion Sci. & Technol., in press)。
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