研究概要 |
パラジクロロベンゼンは衣料用防虫剤や防臭剤として大量に消費される家庭用化学薬品のひとつである。 われわれは,昨年度までの研究によって,組織のグルタチオンレベルが低下したマウスでは比較的低用量のパラジクロロベンゼンによって著しい肝障害が発生することを見いだし,この肝障害の発現様式について詳しく検討した。 今年度はさらに進んで,この肝障害の発現機構を明らかにするための端緒として次のような研究を行った。 1.マウスにグルタチオンの生合成阻害剤ブチオニンスルフォキシミン(BSO)を単独で投与したときと,BSOとパラジクロロベンゼンを組み合わせて投与したときの,肝中グルタチオン,プロテインチオール,過酸化脂質濃度の変化を経時的に追跡し,肝細胞壊死の発生に先だつプロテインチオール濃度の低下や過酸化脂質濃度の上昇は認められないことを明らかにした。 2.パラジクロロベンゼンのフェノール・キノン型代謝物をBSOと組み合わせて投与する実験をおこないパラジクロロベンゼンとBSOの組み合わせ投与によって発生する肝障害にはこれらの代謝物の関与は少ないとの結論を得た。
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