研究概要 |
1.家庭用の防虫・消臭剤として大量に使用されているパラジクロロベンゼン(PDCB)は,マウスに単独で投与したときは,きわめて弱い急性毒性しか示さない。しかし,あらかじめグルタチオンの生合成阻害剤であるブチオニンスルフォキシイミン(BSO)を投与して組織のグルタチオンレベルを低下させたマウスに,PDCBを経口投与すると激しい肝障害が発生することを見いだした。 2.PDCBによる肝障害は,小葉中心性壊死,血清GPT値の上昇,および肝中カルシウムイオンの上昇などによって特徴づけられることを明らかにした。 3.PDCBによる肝障害は,マウスを薬物代謝酵素阻害剤で前処理するとその発現が抑制されることを見いだし,この肝毒性の発現にPDCBの代謝的活性化反応が関与していることを明らかにした。 4.マウスにグルタチオンの生合成阻害剤ブチオニンスルフォキシミン(BSO)を単独で投与したときと,BSOとパラジクロロベンゼンを組み合わせて投与したときの,肝中グルタチオン,プロテインチオール,過酸化脂質濃度の変化を経時的に追跡し,肝細胞壊死の発生に先だつプロテインチオール濃度の低下や過酸化脂質濃度の上昇は認められないことを明らかにした。 5.パラジクロロベンゼンのフェノール・キノン型代謝物をBSOと組み合わせて投与する実験をおこないパラジクロロベンゼンとBSOの組み合わせ投与によって発生する肝障害にはこれらの代謝物の関与は少ないことを明らかにした。
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