1.研究目的 安全標識、とりわけ道路交通標識は、道路交通を安全でスムースに行うことを目的とする規定標識であるが、動的に変化する視野の中では誘目性、視認性などが重要な条件となる。しかし、実際の環境条件下での標識の見え方は背景となる環境色彩によって大きく影響される。 本研究は環境色彩中の道路交通標識の見え方に及ぼす背景色彩の影響について実状を把握し、その改善策について提案することを最終目的としているが、本年はまずモデル画像に対する被験者の眼球運動を解析することにより背景色がどの様な影響を及ぼすかをモデル的に検討した。 2.実験方法 被験者への視覚刺激はVTRモニター(助成設備)画面によって行った。色紙で作成した「一方通行」、「車両侵入禁止」標識を4分割の背景色(灰、赤、黄、緑を用い配置変換)上に置いたモデル画面を3CCDカラービデオカメラ(Panasonic WV-F250BF・AG750A、助成設備)によって撮影、編集して視覚刺激用モデル画像を作成した。被験者にはモニター画像を自由に見てもらい、装着したアイポイントレコーダー(TAKEI TALK EYE)によって視点の動きをリアルタイムで記録した。視点存在時間、初期視点移動方向(初めて視点が移動した方向)および、第1注視点(初めに38ms以上注視した位置)を分析し、合わせてモニター画像の放射輝度値を分光放射計によって測定することにより解析した。 3.結果 標識を置かないで背景色だけの影響についてみると、放射輝度が最も高い背景色黄は他の色に比し誘目性が高い。標識が置かれた画像では、背景色の影響を受けながらも標識に視点が固定される。標識の視認性には背影色彩の影響が大きいことが眼球運動の解析から明らかになった。
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