サルノコシカケ科に属する舞茸には血圧上昇抑制作用があることが、ラットに対して確認されている。これは単一の物質ではなく、複数のタンパク質様物質であると推測され、本研究では舞茸凍結乾燥標品を用いこれらの物質の単離を試みた。なお生物活性は、アンジオテンシン変換酵素の阻害活性をCushman-Cheung法によって測定した。 1)低分子物質について:DEAE-トヨパール650M非吸着画分をSephadex G-25、G-15のゲルロ過を行い、さらにHPLC(220-GS)を用い分画した。その結果、DEAE-トヨパール非吸着画分には、その阻害活性から少くとも4画分に活性が存在し、3番目と4番目に溶出される画分をゲルロ過によりリクロマトし、HPLC分析したところ、2番目に溶出される画分に強い活性がみられた。この画分をさらにHPLCにより精製し、LC-MSにより分析した結果、分子量1000以下の物質であると推定された。 2)高分子物質について:DEAE-トヨパール吸着画分を0〜0.5MNaclによりグラディエント溶出し、次いでSephadex G-100、Sephadex G-200で分画し、HPLC(GS-510)で精製を行った。Sephadex G-100でゲルロ過すると、4画分に分けられ、それぞれのピークはさらにDEAE-トヨパール650M、Sephadex G-200でリクロマトすると数個の活性画分が得られた。HPLCでそれぞれについて分析したところ、さらに複数の活性ピークが得られた。 3)ペプシン水解物について:24hrs、40℃でペプシン消化を行った後100℃、10分間加熱、冷却後遠心分りし上澄みについて、DEAE-トヨパール(0〜0.5MNaclグラディエント)、Sephadex G-15、G-10のゲルロ過を行った。ペプシン水解物では透析後の試料を100%とした場合、阻害活性は、水解後80%残存し、100℃、10分の加熱処理後も55%の残存活性を示した。イオン交換クロマトおよびゲルロ過により、複数のピークに阻害活性が見られた。
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