当研究の一環として、平成5年度は乳化安定剤存在下でのシクロデキストリン(CD)の乳化特性について研究をおこなった。CDはグルコースが環状に結合したもので、環内部な種々の物質を包接する機能をもつ。もしCDが油脂を包接すると、この包接化合物はCD部分が親水性、CDから突き出た部分が親油性となるため界面活性(乳化性)を示す。このCDエマルションにおける乳化安定剤(グァーガム、キサンタンガム、トラガントガム、ペクチン)の影響について各エマルションの乳化活性ならびに平均粒子径について測定した。その結果、乳化安定剤を添加して調製したCDエマルションの活性活溶性は、ペクチン<トラガントガム<キサンタンガム<グァーガムの順にその添加濃度が高くなるにつれて上昇した。また油粒子の平均粒子径は、ペクチン>トラガントガム>グァーガム≧キサンタンガムの順に粒子が小さいことが認められた。そして水相の粘度が高い乳化安定剤を添加したエマルションほど乳化活性が高く、平均粒子径は小さいことが認められた。また低分子化した低粘度のグァーガムとキサンタンガムでは乳化活性が低く、平均粒子径も大きくなった。食品に用いられているO/W系乳化剤のショ糖脂肪酸エステル、カゼインナトリウムを用いてエマルションを調製し、それらのエマルションの粒度分布とCDエマルションを比較すると、平均粒子径においては差が認められなかったが粒度分布においてはCDエマルションが最も狭い分布を示した。また、CD酸性下においても良好なエマルションを形成した。以上よりCDは他の乳化剤に比べて高粘性の乳化安定剤の存在下で均一な油粒子からなる安定なエマルションを形成し、広いpH範囲において良好なエマルションを形成することが認められた。
|