(1)植物油/水界面におけるシクロデキストリン(CD)とトリグリセリド(TG)包接化合物の構造解析:大豆油相あるいはヤシ油相と水相間の界面張力は水相中のCD濃度の増加とともに減少した。CDのみでは界面活性を示さないため、生成したCD-TG包接化合物が植物油/水界面に配向して界面活性を示すと考えられた。CDの界面吸着量とCD1分子当たりの占有面積をGibbs'の吸着式を用いて求めた。占有面積は各CDの最大断面積の値に比べて小さい値を示した。これよりTGの脂肪酸1側鎖当たりCDが2モル以上包接し、界面に配向していると推察した。脂肪酸1側鎖に包接した平均包接分子数(β-CD)は大豆油で2.4、ヤシ油で1.7となり、各々理論値(2.5と1.7)と一致した。以上より、TGの脂肪酸長に応じてCD包接数が決まり、包接化合物のCD部分が水相に、CDが包接していない脂肪酸残基部分が油相に配向して界面に並び、界面活性を示すことが明らかとなった。 (2)乳化安定剤存在下でのCDの乳化特性:乳化安定剤を添加して調製したCDエマルションの乳化活性は、ペクチン<トラガントガム<キサンタンガム<グアーガムの順にその添加濃度が高くなるにつれて上昇し、平均粒子径はペクチン>トラガントガム>グアーガム≧キサンタンガムの順に粒子が小さいことが認められた。粘度が高い乳化安定剤を添加したエマルションほど乳化活性が高く、平均粒子径も小さくなった。このことは低分子化した低粘度のグアーガムとキサンタンガムで確かめられた。他の食品用乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル他)に比べてCDエマルションは狭い粒度分布を示し、酸性下でも良好なエマルションを形成した。以上より、CDは他の乳化剤に比べて高粘性の乳化安定剤の存在下で均一な油粒子からなる安定なエマルションを形成し、広いpH範囲において良好なエマルションを形成することが認められた。
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