研究概要 |
1.研究実施計画の1-(1)ラットをフィチン酸を含まない食餌で3週間飼育後2群(A,B)に分け、A群にはP源としてフィチン酸のみを含む食餌を、B群にはP源としてフィチン酸と共に無機Pをも含む食餌を、それぞれ一日与えた。酸化クロムを指標としてフィチン酸の分解率を、小腸下部(長さで3分の1の部分)および盲腸の内容物について測定した。(2)フィチン酸の分解率は、小腸下部および盲腸の各内容物のいずれにおいても、A群とB群間に有意な差は認められなかった。すなわち、長期投与の場合(平成4年度の結果など)と異なり、一回(1日)投与の場合には、フィチン酸の分解率は低下しなかった。(3)この成績から、食餌中に無機Pが約3週間共存した場合に認められたフィチン酸分解の低下(平成4年度の結果など)は、無機Pによる生成物阻害(プロダクト・インヒビション)によるものではなく、フィチン酸を分解する活性(フィターゼあるいはアルカリン・ホスファターゼ)の側の変化など、他の要因によるものであろうと推定される。 2.研究実施計画2-(1)グルコマンナン、ペクチン、カラギーナンまたはセルロースをそれぞれ10%含む食餌(それぞれ、G、P、Cr、Ce群と称す)で3週間飼育後、小腸下部および盲腸の内容物、および糞について、フィチン酸の分解率を測定した。(2)フィチン酸の分解率は、小腸下部内容物、盲腸内容物および糞のいずれにおいても、G群>P群>Cr群>Ce群の順であり、G群ではCe群の約2倍であった。(3)盲腸重量(内容物込み)とフィチン酸の分解率との間には正の相関(r=0.765,P<0.01)が認められた(GおよびP群では盲腸がCe群の約2倍に肥大していた)。(4)以上により、食物繊維のフィチン酸分解に及ぼす影響の差は、盲腸を肥大させる能力の差に起因する可能性が示唆された。
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