住教育と社会教育施設等との教育連携の可能性を知るため、博物館の提供する情報の実態を調査した。最初に博物館と学校教育との連携の歴史を有するアメリカ合衆国の子供博物館の提供する住領域の情報を分析し、住宅の実物展示に留まらず近隣社会や都市に関する情報、環境問題との関連など現実の即した情報を総合的に提供していることを整理した。この視点から我が国の博物館の提供する情報整理を行ない、その中から先進例を取り出し実態調査を行なった。その結果、我が国には1900を越える博物館・資料館が存在し、日常的にかつ地域に密着した資料を見ることが可能であった。しかし資料の系統性という側面を重視すると公立の登録博物館や博物館相当施設の優位性は歴然とした。住教育関連の情報という立場から言えば、個別に展示される資料性の高い一次資料よりも、総体として構成される総合資料の方が有効である。このことは博物館の学芸員の力量に左右される。多数な専門性を持ち、さらに教育・普及を担当する学芸員まで擁する博物館は、自ずと限られる。また近年住宅ジオラマの作成技術が向上し、高水準の住居情報の可能性は拡大し、さらに住宅単体から住宅が連続した地域の様子までの資料化が可能になった。住宅の詳細から住宅での生活の再現へとその比重が移ったためと考えられる。これらの傾向はまだ多数にはなっていないが、近年の博物館建設の全国的な流れの中で、一次資料の少なさを補う必要性と博物館の独自性が求められてきたことにより、住教育を援助できる博物館、それも現代的課題に対する情報を提供できる博物館は確実に増えている。また教育活動が博物館の課題として重視されてきているので、試したり、触ったり、体験したりというHands-onプログラムの増加傾向は顕著で、学校内では得られない極めて大きなインパクトを期得することができると考えられる。
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