家庭科教育の住領域の資料は、学校単位では確保が困難であるとの認識から、博物館などの学校外の社会教育施設に資料を求めることが可能か、有効に活用できる状況か、などの課題に対して調査し以下の知見を得た。 1)近年歴史博物館や個別のテーマに焦点を合わせた博物館の開館が相次いでおり、博物館の資料を住教育において活用する客観的条件は拡大している。 2)博物館においては、住領域の資料の大型、高価、専門性などの特性から「模型」という形での資料提供が一般であるが、その模型資料は有名建築物の単体模型から街区単位の生活に視点を移した総合生活資料としての模型が多く提供されていた。 3)また博物館内に実物大の街区を復元するモノと生活の関わりの情報を総合的に提供する施設が登場してきていた。 4)博物館以外の施設においても住宅建設や社会基盤整備の立場から住領域関連の資料提供が始まっている。このうち自治体によって生活廃棄物処理に関わる情報提供はリサイクルプラザの建設と相俟って積極的であった。しかしこれらの諸施設は相互の情報交換が十分図られていないため系統的な活用は困難な状況にある。 4)以上の大規模拠点施設に依存しない取り組みとして地域単位で住領域の情報を提供する試みが始まっていた。墨田区の「小さな博物館」運動に代表されるこの取り組みは、小規模の施設を系統的に利用するという面と、地域に密着した街からの情報収集という、2面でのネットワーク化の可能性を提示していた。以上見たように博物館などの学校外における施設での住領域の情報提供のシステムは、かなり高い水準に開発が進んできている。また情報を関連づけて収集するシステムも整備の方向にある。しかしこうした施設の活用は社会科や理科の授業に限定されている状態で、家庭科での活用が目下の課題である。
|