本研究は住領域教育における博物館の果たす役割を検討したものである。主要な知見は以下の7点である。 1.この10年、地域の歴史、自然・社会環境に焦点を絞った博物館が増加しており、住領域教育において博物館の資料は活用しやすくなっている。深川江戸資料館はもっとも典型的な施設である。 2.博物館が提供する多くの資料の中で「模型」資料は、多角的な視点から観察できるため非常に有効である。特にこうした模型に生活用具を組み込むタイプの資料が増え、日常の生活を総合的に学習することができるようになっている。 3.いくつかの博物館では、実物大の建築物を博物館内に復元している。この場合にも総合的な生活情報が提供されている。 4.博物館以外の施設では、生活廃棄物処理にかかわる施設が、資源保護の立場から都市生活に関する情報提供を活発に行なっている。しかし施設を超えた情報ネットワークの確立は今後の課題である。 5.墨田区やそのほかのいくつかの地域では複数の小規模な資料館を通して情報提供を試みている。大規規模施設とは別に、地域に密着したいくつかの小規模の資料館による情報提供の試みが始まっている。こうした資料館群は地域のコミュニティ根ざした情報を提供している。 6.比較として見た合衆国の子ども博物館は自然環境の保護、地域社会、都市基盤、異文化の理解などにより積極的な取り組みが行われていた。 7.また子ども博物館では、展示も体験的な展示方法の開発によって情報がより的確に伝わる工夫が見られた。
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