1)京都大学総合人間学部(旧教養部)図書館に保存されている「三高物理蔵書」のうち、洋書の明治期購入分について、図書原簿、図書カード、現存図書の全てを照合して、目録を作成した。現存図書に関して、著者、書名、出版年、購入年、価格、分類番号などを特定し、続けて内容の分析を進めつつある。 2)今年度に入り、「稿本神陵史」をはじめとする学校史や明治期の各年度の年報、一覧などの基礎的資料の分析も進み、教育制度、カリキュラムなどの変遷と関連づけて、購入書籍の意味づけを分析する基礎が出来た。 3)当部局に保存されている物理学実験機器についても、永平幸雄氏、鉄尾実与資氏らと共にデータ・ベース化を進め、同時期に購入された教科書の教科内容や図版などとの照合を行い、旧制三高の前身校の物理教育の変遷と保存機器との関連の分析を進めることが出来た。物理機器の調査においても、上記の基礎資料が分析を進めるのに貴重な情報を多くもたらした。 4)以上の成果をもとにして、去る12月4日に、先行研究グループと意見交換を行うシンポジウムを開催した。そこで、改めて当部局の保存図書、及び実験機器の史料価値の高さが各方面から指摘され、一層の研究と保存のための努力を要請された。このシンポジウムの成果をもとにして、研究報告をまとめつつある。 5)以上の研究の結果、当部局の保存図書、実験機器は、他の教育機関に比べて残存率が高く、量的にも多いだけでなく、明治初期に外国から購入したものも多く、原簿、学校史、その他の基礎資料が整っていることから、質的にも史料価値が高く、明治期の日本の近代化と、その中での後期中等教育の成立過程を、資料面から検証して行くべき内容を持っていることが確証されたと考えている。
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