京都大学の現総合人間学部の図書館には、京都大学の前身校が明治時代に購入した大量の物理学の書籍がって、その多くは輸入した教科書である。我々は台帳や当該図書に当たって、出版、購入年を特定し、980点について目録を作成した。また、これらの前身校が同時期に購入した和書や、300点以上の物理実験機器の調査も行ってきた。これらの歴史的資料の分析から、近代日本の黎明期における中等教育の中での物理教育の実態が解明されるようになった。 この資料群の歴史的価値を明らかにし、また、この分野の先行研究との情報交換をはかるため、我々は「旧制三高の保存史料に関するシンポジウム」を開催し、札幌農学校、旧制一高などの資料との比較研究を行った。同シンポジウムにおいて、旧制三高の資料群は、教科書、実験機器、台帳その他の基礎資料のすべてにわたってかなりよく保存されていて、このような例は日本の他の教育機関では見られていないことが確認され、この資料群の調査分析の重要性が改めて指摘された。同シンポジウムへにおける講演および議論は別冊の報告書にまとめた。
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