健康度や体力が低下した高齢者が活動的に生きていく上で適度な運動の重要性が強調されているが、積雪環境下で生活する高齢者にとって冬季の運動実施にはさまざまな抑制因子が作用し、身体活動量が不足する結果、機能低下が助長される懸念がある。平成4年度には、札幌市内で自立した生活を営み定期的な運動習慣を持たない高齢者10名を対象として、非積雪期と積雪期における身体活動水準の測定を実施した。 平成5年度は、活動的なライフスタイルで生きる69〜96歳の男女高齢者7名について同様の測定を実施した。その結果、(1)活動的な高齢者は、非積雪期、積雪期を通して各自の身体的条件や環境条件に応じた運動実施を継続して行っていること、(2)身体活動水準の目安である心拍数の指標は、安静値や運動時の個人差が大きいため、絶対値からは強度を評価しにくく、各自の安静時からの増加分にも注目する必要があること、(3)運動量の簡易な指標である万歩計値は、非積雪期では歩数を反映するが、積雪期の場合、除雪作業などの上半身を使った運動や歩くスキーなど重心の上下方向の加速度が少ない運動では心拍数の上昇に対して増加が少なく、運動量を評価するのに適当でない。(4)身体的にアクティブなライフスタイルが、自立した生活能力を維持するだけでなく、奉仕活動など社会の福利を増進するエネルギーとしても発揮されるエネルギーとも関連すること、などの点が明らかになった。 現在、これらの結果に加えて活動的な身体習慣を持つ高齢者約100名を対象として、非積雪期と積雪期における生活習慣、食生活、運動歴などからライフスタイルの諸特徴を浮き彫りにするための調査を実施中である。
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