研究概要 |
本研究は,短時間激運動中および運動後の筋中プリン代謝動態について,purine uncleotide cycleとその周辺代謝物質を中心に検討することを目的とした。実験では筋中プリン代謝動態に関してより明確な示唆を得るために,IMPのreaminationを特異的に阻害するhadacidin(N-formyl-N-hydroxyaminoacetate)を投与した群(n=25)と,対照としてsaline(0.85%NaCl)を投与した群(n=25)とにラットを分け,5分間の筋刺激(6V,0.1ms-duration,100Hz)を負荷し,その前後の腓腹筋,または血漿中のプリン代謝物質,アミノ酸,およびアンモニアなどについて検討した。さらに筋から放出される代謝物質を血液の影響を最小限に抑えて評価するために,大動静脈からの後肢筋潅流下に同様の筋刺激を負荷し,その前後の潅流液中プリン代謝物質およびアンモニアの変化について検討した。 その結果は以下に要約する。 (1)短時間の激しい筋収縮中に,AMPdeaminationとともにIMPreaminationが同時に代謝を進行させることが確認され,ATPの再補給に貢献していることが明らかにされた。(2)筋刺激直後のIMPと筋中のアンモニアとの間には平衡関係が認められ,アミノ酸代謝に由来するアンモニアの影響はほとんどないことが示された。(3)筋収縮によって蓄積されたIMPの一部は,その回復過程初期から脱リンしinosineやhypoxanthineに代謝されて迅速に血中へ放出されることが確認された。(4)筋中のアミノ酸はIMPreaminationが最も活性化される,筋収縮直後から5分後にかけて,purine nucleotide cycleへの窒素源供給を実現するために代謝を高進させていることが示された。また筋収縮に対するその代謝応答は非常に迅速であり,かつ連鎖的に反応を進行させていくので,筋中アミノ酸プール全体が著しく増加する結果となる可能性が示唆された。
|