運動が健康の増進・維持に効果があるという考えが広く受け入れられるようになり、健康スポーツがますます盛んとなっている。本研究では健康の維持・増進に有効とされている有酸素運動が免疫機能とくに細胞性免疫機能に与える影響を検討した。有酸素運動の習慣をもつ成人では細胞性免疫機能とくにナチュラルキラー細胞(NK細胞)の活性が運動習慣のないものと比較すると男女とも高いことが明らかとなった。また、経時的にNK細胞活性の変動をみると、日々の運動量が増すに従い活性が高値を示していくことも明らかとなった。つぎに、このような有酸素運動がNK細胞活性へ与える影響の機序を探る目的でNK細胞にレセプターを持つカテコラミンなどのホルモンとの関係を検討した。急性の有酸素運動負荷により、各種ホルモンがNK細胞活性の変動の平行して変動することが明らかとなった。また、マウスを用いた実験系ではカテコラミンの共存下ではその濃度によりNK細胞の活性が影響を受けることも示唆された。かかる成績から有酸素運動が免疫に与える影響の機序には複数の因子が関与していると考えられた。また、情報伝達物質であるサイトカインの関与についても検討したが、運動により変動するという結果を得たのみで機序への関与については今後の課題となった。今後運動と免疫に関する研究をさらに進めるためには情報伝達物質の関与を含め様々な視点からのアプローチが必要と考えられた。
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