身体を構成する脂肪、筋および骨などの組織量およびその比率は健康体力の向上を目指す身体運動から競技スポーツまで、その成果はおおきな影響を与える要因のひとつである。とくに脂肪量は運動不足やエネルギーの過剰摂取からおこる肥満問題と関係があることから、その定量化は多くの研究者により研究されている課題である。本研究ではMRI装置により得られた日本人成人の全身の連続横断面像から皮下脂肪、筋および骨などの組織の分布状態を定量化し、日本人成人の身体組成および重量分布について検討した。 測定項目はMRIによる全身の横断面像の撮影、形態計測、水中体重、体肢容積、皮下脂肪厚である。 MRI装置を用いた横断面像の撮影は皮下脂肪、筋、内蔵および骨などの組織が識別できるような条件にて全身を2cm間隔で行った。全身の連続横断面像はフィルムあるいは磁気テープに記録したのち画像処理装置を利用して皮下脂肪、筋、骨および内蔵などの組織別の横断面積を求めるために用いる。組織別の横断面積とスライス間隔を乗じて容積を求め、さらに組織別の密度を乗じて重量を求めた。 女性の被験者4名(身長、体重)について分析した結果、全身の容積ではMRI法と水中体重法との差は1%であり、下肢容積では2.5%の差であり、MRI法での容積測定の精度の高さを示している。また、組織別の密度から体重を推定した結果、0.6%の誤差が認められた。これらのことから、MRI法による体肢組成別の重量推定の精度は筋と脂肪組織の識別の精度に依存することが示唆された。
|