本研究では、喘息児の健康づくりを目的として、従来実施してきた水泳だけでなく、呼吸機能に強い影響を及ぼすと見られている剣道を取入れ、喘息症状と運動強度からみた喘息児の健康状態・呼吸機能の改善方法について検討してきた。 被検児は、7〜14歳の喘息男児6名、対照群は健常男児5名である。これらの被検児に週2回、各1時間の剣道を指導した。 測定は、自転車エルゴメーターを用いてall-out負荷を加え、最大酸素摂取量、肺換気機能(FEV_<1.0>、FVC、PFR)の測定を、平成4年7月、12月に行なった。この間に、血液性状および免疫グロブリンE(IgE)についても測定した。 結果、(1)喘息児特有の体力不足と無気力感が目立ち、剣道教室を軌道に乗せる事は困難であったが、家庭との連係を密にする事により両親の協力が得られ、両親が率先して子供を参加させている。 (2)免疫グロブリンE値の平均値は845.9±132.25IU/mlであった。 (3)練習中の心拍数は、例えば、9歳A男児が最高190beats/minを記録し、発作が心配されたが、直に深呼吸することにより、呼吸を整え発作を抑えることができるようになった。 (4)このA男児は、第1回測定時(7月)には、5分25秒に1.25Kpの負荷で心拍数173beats/min、最大酸素摂取量(〓O_2max)は30.36ml/min・kgでall-outになったが、第2回測定時(12月)には7分5秒、2.0Kpの負荷でall-outとなり、〓O_2maxは36.26ml/min・kg、心拍数196beats/min、でAT(anaerobic threshold)を示した。同様に他の喘息児においても水泳訓練以上にAT値の向上が認められた。 (5)肺換気機能(FEV_<1.0>)の運動前後の変化も、一般に認められている喘息児特有の運動直後の大きな低下はなくなりつつある。 以上、今後も剣道を指導しながら継続して喘息児の健康づくりに取り組んでいく予定である。
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