本研究の目的は、中高年者のスポーツへの再社会化に至るプロセスを明らかにすることにある。研究初年度にあたる平成4年は、スポーツへの社会化及び阻害要因に関する先行研究のレビューと中高年者に対するプリテスト(面接法)により、スポーツへの再社会化のメカニズムを解明するための質問紙を作成した。同年11月、第5回全国健康福祉祭(ねんりんピック)山梨大会の参加者304名に対する質問紙調査を郵送法により実施した。さらに、ねんりんピックをはじめとする中高年者が参加する生涯スポーツイベントのフィールドワークを行い、スポーツへの社会化過程に関するヒアリング調査を実施した。 これらの調査研究の結果、高齢期におけるスポーツ参加に至るプロセスは、スポーツ種目により顕著な相違点がみられることが明らかになった。ライフステージからみたスポーツの参与パターンを分析すると、テニスでは「継続群」が、ペタンクでは「再社会化群」、そしてゲートボールでは「継続群」と「再社会化群」の両方が検証された。再社会化群においては、健康の保持・増進、自由時間の増大、生きがいの探求という動機から、身近なサークルにおいて新たにスポーツ活動を学習している。また、過去のライフステージにおけるスポーツ経験については、継続群と比較して学齢期では差がみられないが、30歳・50歳頃の中年期において、活動レベルが顕著に低い傾向がみられた。継続群に関しては、老年期以前のライフステージから、同一種目をクラブや同好会において活動を続けている。特に、50歳頃の中年期におけるスポーツ参加のレベルが高く、現在の活動に強い影響を及ぼしていることがうかがえ、高齢期のスポーツ参加においても、退職前教育の有効性が示唆された。
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