ほん研究において、まずテイル・サスペンション時の筋萎縮に伴う収縮特性と筋タンパク質の変化についての詳細な検討を行った。そして。サスペンションのヒラメ筋への影響が特に顕著であることを認めた。さらに、サスペンションによるヒラメ筋の萎縮およびそれに伴う筋力発揮能力の低下は、筋タンパク質とりわけ筋原線維タンパク質の顕著な減少によるところが大きいことを明らかにした。しかし、筋力発揮能力の低下は、筋原線維タンパク質量あるいは濃度の減少だけでは説明できなかった。そこで、カルシウムイオンを制御する機構の機能低下など、他の要因の関与もあると推察した。サスペンションにより、ヒラメ筋は萎縮と同時に速筋化もおこすことが単収縮時間と50%弛緩時間の測定より明らかとなった。また、これにはミオシン重鎖アイソフォームの変化をともなっていた。アイソフォーム変化は、従来の報告よりも顕著で、サスペンション群ではミオシン重鎖1、2a、2d、2bのすべてが発現された。一方、myofibrillar ATPase活性の有意な変化は伴っていなかった。さらに本研究では、サスペンションによるヒラメ筋の萎縮およびそれに伴う生理・生化学変化が、1日あたり1時間あるいは12時間の着床でどの程度防止できるかを検討した。そして、1時間の着床はタンパク質量、筋原線維タンパク質濃度、および単位筋重量あたりの最大張力の低下を有意に防止できるに留まるが、12時間の着床はサスペンションに伴うほとんどすべてのパラメーターを有意に防止できることを明らかにした。今後、着床よりも短時間で大きな防止効果の得られる方法を模索する必要があると考えられる。
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