研究概要 |
身体活動時の歩数計歩数の歩数信号を電気的信号に変換し,30秒のサンプリングタイムで34kbyteのICメモリに保存する改良歩数計を作成した。測定終了後,記憶された信号をインターフェイスを介してパーソナルコンピュータに取り込み演算処理をさせ,歩数の経時的変化をペトグラムとして表示させた。ペトグラムの時間積分は一定時間内の総歩数であり,これは代謝量に比例するものと考えられる。また,その時間微分は時間あたりの歩数を表し,これは運動強度に関係する指標となる。 今日,運動処方において,運動強度の設定指標として心拍数,や酸素摂取量,METs,RMR等が用いられているが,いづれの方法も煩雑であり,実践には利用しにくいところがある。科学的に問題があり,学問的には否定的に見られているものの,広く普及している指標に歩数計がある。 ペドグラムを体力科学的に基準化するために,日常生活,スポーツ活動時について生理的負荷量,エネルギー消費量の指標として科学的に検証されている心拍数,酸素摂取量と歩数の同時測定を行った。心拍数(yh),酸素摂取量(yo),歩数(x)の時系列データについて最小二乗法によりy=ax+bの回帰式を求めた。aは1歩あたりの心拍数,酸素摂取量を,bは安静時のそれを表す。歩数(x:歩/分)と心拍数(yh:拍/分)との間には日常生活活動でyh=0.379x+69.6,スポーツ活動時でyh=0.589x+71.7の,酸素摂取量(yo:リットル/分)との間には日常生活でyo=0.0035x+0.221,スポーツ活動時でyo=0.0056x+0.558のそれぞれ統計的に有意な関係が得られた。健康づくりとして推奨されている1万歩/日は173kcalであった。 1日の生活行動を体力科学的見地から評価するため,ペドグラムについて運動強度を表す歩/分の頻度別解析を行った。高校生,高齢者ともに,1日の70%以上が1分間あたり歩数が0〜10歩(推定心拍数:73拍/分)の座位,若しくは立位の状態であり,体力改善に必要な運動強度が得られたのは高齢者で2.6%,高校生で1.1%であった。
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