研究概要 |
単純性肥満患者における食事および運動の併用療法(CT療法)と食事のみを制限する食事療法(NT療法)とによる減量が、血圧調節物質と血糖値(GLU)及びインスリン濃度(INS)とに及ぼす影響について検討した。対象は女性の単純性肥満患者28名で、摂取熱量をCT療法1000kcal/日、NT療法700kcal/日に制限、約1カ月間管理し、その間CT療法は血中乳酸濃度閾値(LT)強度で300kcal/日の自転車エルゴメーター運動を行った。採血は10〜12時間絶食後、肘静脈から採血し、その後75g経口糖負荷試験を行い、60,90,120分後に採血した。体重、体脂肪率(%Fat)、除脂肪体重(LBM)、最大下運動負荷試験より最大酸素摂取量(Vo2max)、血中の血圧調節物質、GLU及びINSなどの項目を入院前と退院時との測定したその結果、体重は両療法とも有意に減少し、LBMはNT療法で有意に減少した。Vo2max及びVo2/LBMはCT療法のみ有意に増加した。このことより、CT療法の方が身体に負担をかけずに脂肪のみを選択的に減少させ、有酸素性能力を向上させることが示唆された。血圧は収縮期血圧で両療法ともに有意に減少した。タウリン(TAU)はCT療法において有意に減少し、プロスタグランディンE(PGE)は両療法ともに有意に減少した。ただし、いずれも両療法間に差は認められなかった。これは、食事制限による摂取栄養素の減少がTAU及びOGEの体内での合成を相殺したことが考えられた。一方プロスタグランディンE2(PGE2)は食事制限がありながらもCT療法で有意に増えた。これは運動によるアラキド酸のPGEイソメラーゼ活性化と、プロスタグランディンが骨格筋で合成されることから運動そのものがPGE2の合成を促進したものと考えられた。GLUとINSは両療法とも顕著な変化が認められず、いずれも両療法間に差は認められなかった。これは期間が短期間であったことや摂取熱量などの問題が考えられた。今後、摂取熱量の充実と例数の増加、他因子についての検討の必要性が考えられた。
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