細胞外マトリックス分解性メタロプロテアーゼ(MMP)の活性は合成促進因子、活性化因子、インヒビターなどによって複雑に調節されている。前年度は、種々のMMP前駆体に対する活性化酵素と、MMPインヒビターの分子種について報告した。本年度は、まだ活性化機構がほとんど分かっていないゼラチナーゼA(MMP2)前駆体のストロムライシンによる活性化機構を詳細に調べた。 ゼラチナーゼA前駆体をTIMP-2結合型と非結合型に分けて精製し、それらに対するストロムライシンの影響を調べた。非結合型をストロムライシンで処理すると、有機水銀化合物であるAPMAで完全に活性化した場合の約70%の活性が得られた。この処理によって、64kDa(非還元時の分子サイズ)の前駆体は41kDaの活性型に変換していた。TIMP-2結合型をAPMAで処理しても全く活性化されなかったが、APMAとストロムライシンの共存下で57kDaと41kDaの活性型に効果的に変換した。一方、ストロムライシン単独で処理すると、APMAとストロムライシンによって得られた活性の約50%の活性が得られたが、活性型酵素への分子量の変換は見られなかった。このことについてさらに検討した結果、ストロムライシンはTIMP-2結合型前駆体のTIMP-2分子に結合し、安定な複合体を形成することが分かった。おそらくこのストロムライシンのTIMP-2への結合が立体構造の変化をもたらし、前駆体のままで活性を発現させたものと考えられる。 以上の結果から、おそらく同じMMPに属すストロムライシンが生体内でのゼラチナーゼA前駆体の活性化因子として機能していると考えられる。
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