研究概要 |
近年、生体に於いて、血管拡張作用の媒体として、また、神経細胞では、cGMPを上昇させる場合のメッセンジャーとして、NOが発見され、注目されてきた。続いてNO合成酵素が発見され、アルギニンのグアニド基のN2より、合成されることも明らかにされている。現在、酵素の精製も行われているが、不安定であることと量が少ないため、性質の同定は、はっきりしていない。従って、NO合成酵素を大量に精製する目的で、牛脳より精製を試みた。既に、報告されているAMPアフィニティークロマトグラフィーを含む方法に基づいたが、蛋白化学的には適するが反応機構を検討するには酵素が不安定であり、とくに精製度が進むと失活が著しく、BSA等による安定化もできなかった。現在生体中に安定化させる因子が有るか検討中である。また、酵素活性を測定するのに、生成物であるシツルリンを、プレラベルし、HPLC法による分離定量に基づく簡易測定法を現在検討中である。今後は、大量精製の方法としては、酵素のcDNAを譲受け、(国立ガンセンター江角博士より)バキロウイルス-昆虫培養細胞系で発現させ精製する。その酵素を用いて、補欠分子族の定量、スペクトル上の性質、補欠分子族(FMN,FAD)間の酸化還元電位の高低を嫌気的条件で滴定してもとめる。又、カルモジュリンがこの酵素の反応を調節している事が知られている。従って、カルモジュリン存在下でフラビンの酸化還元電位がどう変化するか、吸収スペクトルがどう変化するかを検討する。ストップドフロー法にて基質NADPHによる酵素の還元反応をフラビンの吸収変化で追跡し素反応を明らかにする。また、予め、ヂチオナイトで還元した酵素とアルギニンとの酸化反応速度の解析を行う。以上をもとに、NO合成酵素の反応機構を明らかにする。
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