多くの動物細胞の増殖・移動・分化などの基本的活動には細胞外マトリックスへの接着が必須である。本研究では、細胞接着機構と接着情報の伝達機構の解明を目的としている。 1.マウス肺がん3LL細胞のフィブロネクチンへの接着は20μg/mlのサイトカラシンBで87%抑制されたことから、接着にはアクチンフィラメントを含む細胞骨格の再編成が必要であり、この再編成は細胞表面レセプターのクラスタリングに伴って起こると考えられた。従って、細胞接着に伴う細胞骨格の再編成が接着情報となっていると考えられる。 2.このがん細胞のフィブロネクチンへの接着がガレート基をもつカテキン類によって阻害されることがわかった。この阻害作用は、カテキン類がフィブロネクチンおよび3LL細胞の両方に結合して作用する結果であることがわかった。カテキン類が3LL細胞表面タンパク質に結合し、レセプターのクラスタリングを阻害している可能性がある。 3.これらのカテキン類が3LL細胞のウシ血管内皮細胞への接着を阻害することを明らかにした。この場合は、カテキン類が内皮細胞へ作用するのではなく、3LL細胞に作用する結果、接着阻害が起こることがわかった。すなわち、カテキン類と結合するタンパク質を検索することにより、内皮細胞への接着に関与するがん細胞表面タンパク質を同定できる可能性がある。 4.細胞接着に伴うミオシン軽鎖のリン酸化については、マウスおよびウシミオシンを調製し、抗体を作製した。細胞接着に伴うミオシン軽鎖のリン酸化の変化については、細胞剥離法に問題が生じ、まだ結果を得るまでに至っていない。今後培養細胞からの有効なミオシン抽出方法を検討・確立し、ミオシンのリン酸化を追究していく予定である。
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