研究概要 |
I.フィブロネクチン(FN)の線維芽細胞遊走作用発見におけるプロテアーゼによる活性化機構の究明 多くの生体現象に関与することが知られているmatrix metalloproteinase(MMP)がFN分子からの遊走作用を有するFib2フラグメント及び分化誘導作用を示すFib1フラグメントの遊離を解析した。Stromelysin,matrilysin,geratinaseA、及び間質collagenaseのうち、matrilysinはFN分子には余り反応性を示さなかった。活性Fib2フラグメントの遊離という点では、昨年の炎症性プロテアーゼと比べてもgeratinaseAが最も活性が高かった。このgeratinaseAは活性Fib1フラグメントの遊離という点でもactiveで、ST-13前脂肪細胞の分化誘導活性を有するFib1フラグメントを効率よく遊離したものの、前年の好中球elastaseに比べるとその活性強度は約半分でしかなかった。これら細胞外プロテアーゼはFN分子から多彩な活性を示すフラグメントを遊離することで、FNの細胞遊走因子としての機能を多様化していることが示されたが、今回更に、ある種のcysteine proteaseは細胞外ばかりでなく細胞内でも機能することによって線維芽細胞の遊走を直接制御している可能性を見いだした。即ち、NIH-L13細胞のFNへの遊走はcysteineprotease inhibitorであるE-64cによって阻害され、細胞膜透過性を上げた誘導体であるE-64dはCa^<2+>-dependent cysteineproteaseに対する阻害活性は同じであるにも関わらず、遊走に対しては更に強力な阻害活性を示した。 II.21K Fib2フラグメントの構造と活性の相関およびそれを認識する細胞表層レセプターの究明 21K Fib2フラグメントを構成する5つのタイプI繰り返し配列構造を規定する-S-S-結合を還元アルキル化し活性への影響をみたところ、NIH-L13細胞遊走活性は還元アルキル化によって完全に消失した。一方、昨年に引き続きaffinity chromatographyによる21K Fib2フラグメントレセプターの分離を試みた。昨年からの改良法として、^<125>I標識NIH-L13細胞の抽出液をFib2固定化ゲルにチャージ後、GRGDSP peptideによるカラム洗浄に加え新たに、BSA液及びFib2を除くFNの各ドメイン由来のフラグメント混合液等によるカラムの洗浄を行った。その結果、Fib2フラグメントによる溶出はより特異的になり、分子量30kDa,60kDa,及び>200kDaの放射活性バンドが検出された。これ等のバンドは、^<125>I-Fib2フラグメントとNIH-L13細胞をincubateした後2価反応性試薬でこれらをlinKした時にも認められ、Fib2レセプター関連タンパクではないかと考えられ更に解析を加えている。
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