研究概要 |
マウス肝より分離、培養した肝細胞をインターフェロン(IFN)-α/β処理することにより培養上清に現われるIFN抵抗性フレンド白血病細胞FLCに対する抗増殖因子の精製を試みた。アッセイとしてはFLCによるチミジン取り込み抑制を用いた。肝のprimary cultureには通常2-4%の非実質肝細胞(Non-parenchymal cell;NPC)がふくまれる。NPCの中にはkupffer cellやendothelial cellなどactivateされたときにIL-1,TNF等の種々のサイトカインを放出するものがありこれらのサイトカインが抗増殖因子の活性に関与している可能性を調べることが重要であったが、精製したNPCをIFN処理しても全くそのような活性が現われないことや種々の抗体を用いた実験によりNPCの関与は否定された。IFN処理(又はコントロール)肝細胞よりえられた培養上清を透析後、陽イオン交換クロマトグラフィーにて分析したところIFNにより特異的に誘導された抗増殖活性はFlow through画分に現われ、カラムに吸着して塩勾配にて溶出された抗増殖活性を持つ肝アルギナーゼと区別された。次に同様に培養上清を透析後(20mMTris/HCl buffer,pH7.5)陰イオン交換クロマトグラフィーにて分析したところIFNにより特異的に誘導された活性はカラムに吸着され0.4MNaCl付近にてほぼ単一のピークとして溶出した。活性画分を集め濃縮後分子篩クロマトグラフィーにより分析するとほぼ40kDaに抗増殖活性を認めた。より高度に精製しN末のアミノ酸配列を分析する必要があったが、抗増殖活性が予想以上に活性を失いやすく、そこまでに至ることは出来なかった。以上のことより今回の成果としてはIFNのin vivoの肝臓に於ける抗腫瘍活性のメカニズムの一つとして従来言われていたNK cell(pit cell)の細胞傷害活性以外に肝実質細胞の可溶性因子を介した抗腫瘍メカニズムの存在を分子レベルで明らかに出来ることを示した点にある。
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