出芽酵母の染色体複製起点は11塩基対のコア配列とそれに隣り合うエンハンサー配列からなる。エンハンサー配列内にはコア類似配列が複数個現れる場合が多い。私は大腸菌において、特異的な配列を持つ一本鎖DNA上に複製複合体プライモソームが形成されることを見い出してきたので、酵母においても同様な複製複合体を単離する目的でコア配列を合む一本鎖DNA(T-rich鎖)に結合するタンパク質の単離を試みた。その結果、RNA結合モチーフとして提唱されているRNA recognition motif(RRM)を有するCTBP-1およびCTBP-5(すでに報告されているSSB1と同一であった)を単離した。 CTBP-1(これと同じ遺伝子が最近RBP1として報告された)についてはその結合特異性および結合に必要なタンパク質ドメインについて詳細な解析を行った。その結果、CTBP-1はピリミジンを含むpolydeoxyribonucleotideに強く結合すること、結合にはRNP-1とRNP-2を含む1個のRRMのみで十分であること、CTBP-1に含まれる2個のRRMは単独では元のタンパク質の10分の1の親和性をもつにすぎないが、2個存在することにより強い親和性を示すことなどを明らかにした。CTBP-1は酵母の増殖に必須ではないことから染色体複製に必須な役割をはたしている可能性は否定された。染色体上に存在するpolypyrimidineあるいはCTの繰り返し配列はH-DNAあるいはtriple helix構造などの特徴的な高次構造をとることが知られており、CTBP-1はこれらの構造と相互作用する可能性を検討している。
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