本研究は、細胞膜標品中のG蛋白質の細菌毒素によるADアリボシル化され易さ(ADアリボシル化基質活性)を指標に、細胞内においてG蛋白質が機能的な変化をおこしている例を探し出し、さらにその機構を解明することを目的とする。今年度は以下の知見をえて、現在、投稿準備中である。(1)血清処理ザイモザン(SOZ)とインキュベートした好中球からえた細胞膜標品中のGiは百日咳毒素に対する“ADアリボシル化基質活性"が大きく低下していた。ホルボールエステル(PMA)にも同様の作用が認められ、これらの薬物の効果はスタウロスポリンで強く抑制された。(2)^<32>Piでラベルした細胞をSOZやPMAで処理したのち可溶化し、免疫沈降法を用いた解析を行った結果、Giのプールはごく一部がリン酸化されているのみであった。従って、上の現象をCキナーゼによるGiのリン酸化で説明することは困難と思われた。(3)PMAやSOZで処理した細胞では、Giと共役する各種の受容体アゴニストによってひきおこされる、細胞内カルシウム濃度の上昇が抑えられていた。この作用もスタウロスポリンによって抑制された。fMLPとインキュベートした細胞においても、ヘテロの脱感作が観察されたが、この場合にはスタウロスポリンは作用せず、“ADアリボシル化基質活性"の低下も観察されなかった。(4)fMLPによる脱感作は、細胞膜レベルにおけるGTPγS結合、GTP加水分解活性の低下を伴っていた。しかし、PMAやSOZにはこの様な作用は認められなかった。(5)以上の結果から、好中球の脱感作には少くともふたつの機構が存在し、“ADアリボシル化基質活性"の測定は、とくにPMAやSOZによる脱感作機構の解明に有効に利用しうるものと考えられた。
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