当初計画したホスホリパーゼD(PLD)の活性調節機構について、論文発表には至っていないが、以下のような非常に興味ある新しい知見が得られている。 細胞膜透過性細胞と細胞質との再構成系におけるPLDの活性化:ウサギ好中球を[^3H]lyso platelet-activating factorと保温して内因性のPLD基質phosphatidylcholineを標識した後、ストレプトリジン0で処理して細胞質を除去した細胞膜透過性好中球を調製した。この膜透過性細胞をGTPγS/Ca^<2+>/Mg-ATPで刺激してもPLDの活性化が認められなかったが、ラット大脳より調製した細胞質共存下では顕著なPLDの活性化が認められた。この膜透過性細胞と細胞質との再構成系でのPLDの活性化は、GTPγS//Mg-ATPあるいはGTPγS/Ca^<2+>でも認められたが、最大の活性化は三者を必要とした。以上の結果より、ウサギ好中球のPLD活性化は、GTP結合蛋白質、タンパク質キナーゼおよびCa^<2+>依存性因子の三者を必要とすることが示唆された。 PLD活性化因子:カルモジュリン(CaM)阻害剤のフルフェナジンを固定化したアフィニティーカラムクロマトグラフィーを用い、CaMを除去したラット大脳細胞質を調製した。カラムに結合したCaMは、EGTA溶液で溶出した。上述の方法で調製した膜透過性好中球とCaM不含細胞質を再構成すると、GTPγS/Ca^<2+>/Mg-ATPによるPLDの活性化は、CaMを含む細胞質と再構成した場合と比較して顕著に減少したが、カラムから溶出したCaM画分を添加することにより回復した。精製CaMを用いても、CaM画分と同様な効果が認められた。 以上の結果から、CaMは少なくとも部分的にはウサギ好中球のPLD活性化機構に関与していることが結論づけられた。
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