研究概要 |
成長ホルモンにより調節されているマウスステロイド16α水酸化酵素(P-450 16α)は、肝において雄特異的発現を示す。これは脳下垂体前葉から分泌される成長ホルモンが、雄ではパルス的発現をしており、これが P-450 16αを転写レベルで制御している。成長ホルモンは、細胞膜に存在する特異的レセプターを介して刺激が伝達される。しかし、その遺伝子レベルでの分子機構は不明である。それゆえ、この遺伝子の調節機構を分子レベルで解明することを目的とする。 P-450はスーパー遺伝子ファミリーであり、現在100種近くの遺伝子が同定されその中のステロイドホルモンの合成に関与する分子種はその発現様式の解析が進んでいるが、成長ホルモンで制御され、雄特異的に発現するP-450は、その発現様式がユニークであり、この機構を解明することは意義深い。 HepaG2を用い、P450 16αの5′上流域を5′方向から漸次欠失させたDNAをCAT遺伝子の上流に置き、トランスフェクションした。現在basalな転写に必要な領域を二つと、成長ホルモンにより、促進的に転写制御に働く領域と、阻害的に転写制御に働く領域を決定した。又、発現量に性差があるマウスのBalb/c系統を使い、肝の単離核を調整し、P-450 16α遺伝子のDNase感受性にさがあるかどうかを調べた。-5.5kbpと-3.0kbp付近に雄でのみDNase感受性の領域があった。この領域は去勢により検出できなくなり、成長ホルモン投与により回復した。 また、P450 16αの発現を誘導する因子として、種々の細胞増殖因子の関与を考え、まず手始めに、繊維芽細胞増殖因子(FGF),Wnt,の遺伝子をクローニングし、それらの遺伝子の発現をwhole-mount in situ hybridization(WISH)法で調べたところ、成体だけでなく、初期発生のいろんな時期にいろんな部位に発現していた。それらは種々の形態形成にも関与していることが強く示唆された。
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