種々の電子吸引性の異なる側鎖をもつ再構成ペルオキシダーゼを調製し、それらとスーパーオキシドアニオン(O_2^-)ならびに過酸化水素との反応性を調べた。その結果、電子吸引性の強い側鎖をもつヘムで再構成したペルオキシダーゼが、安定なO_2^-あるいは過酸化水素複合体を生成することが判明した。これらを使用して、好中球のバースト呼吸に伴うO_2^-産生を解析したところ、1)可溶性物質による刺激では、消費された酸素がほぼ定量的にO_2^-に変換され細胞外に放出されること、2)貪食においては、反応の初期にのみO_2^-の放出がみられ、貪食後では細胞内で生成したO_2^-は過酸化水素に変換されることが明かになった。また、チトクロームb_<558>が呼吸系の末端酸化酵素であり、その還元型と酸素との反応からO_2^-が生成することも明かにした。 この方法を用いて解析した甲状腺細胞のバースト呼吸の結果をまとめると、1)分画した細胞膜では、NADPHに依存した著しい酸素消費がみられ、消費された酸素の大部分はO_2^-に変換されること、2)丸ごとの細胞では、カルシュウム依存的にバースト呼吸が惹起され、その際O_2^-ではなく過酸化水素の細胞外放出のみが観察された。これらの結果は、膜結合性のNADPH酸化酵素は細胞質側にあり、カルシュウムの流入により活性化させると細胞内にO_2^-を放出し、O_2^-はスーパーオキシドジスムターゼにより過酸化水素に変換され細胞外に出ることを強く示唆している。一方、ウニ卵では酸素代謝活性が弱く、このような解析は現時点では不可能であった。今後、ウニ卵の採集時期等の問題を考慮しながら、研究を進める。また、バースト呼吸の活性化と一酸化窒素との関わりを明かにすべく、現在グアニル酸シクラーゼによる一酸化窒素の微量定量法の開発を試みている。
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