12時間絶食後のラットにロイペプチン・E64cを投与し、研究計画調書に記載した方法に従ってオートリソゾーム(以下ALと略)を調製。これを低張処理に依って破砕し、AL膜分画を得た。AL膜を更に10mMCaで処理すると、低速遠心で沈殿する分画(AL-H)と上清に残る分画(AL-L)とに分かれた。これらの膜分画を、デキストランを投与したラット肝から得られたリソゾーム膜(Lm)と比較し、以下の知見を得た。 1.AL-LはLmと極めて良く似た蛋白組成を持ち、AL-Lをウサギに免疫して得られた抗体はLmと良く反応する。 2.AL-HはAL-Lと異なり、小胞体マーカーであるcytochrome P450とLmマーカーであるlgp120を持つ。一方、AL-Hをウサギに免疫して得られた抗体はイムノブロットで60-70kのポリペプチドと強く反応するが、この成分は小胞体やLm、AL-Lには存在しない。 細胞内蛋白分解の主要経路であるオートファゴサイトーシスでは、細胞質成分を取り込んだオートファゴゾーム(AP)が形成され、APはリソゾームと融合してALとなり、AP膜成分は、取り込まれた細胞質共々分解される。APの由来やALへの熟成過程には不明な点が多く、AP膜の一部が小胞体に由来することが分かっている程度である。上の結果は、AL膜の中に、より熟成したAL由来のもの(AL-L)と、小胞体とLmの両方のマーカーを持つ若いAL由来のもの(AL-H)が混ざっていることを示し、更にAL-Hには他のオルガネラに無いマーカーが存在することを示唆し、これがAPの固有マーカーである可能性が有る。平成5年度では、このマーカー成分に焦点を絞りその性質を明らかにしたい。
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