研究概要 |
我々はヒトの白血球cDNAライブラリーより,ウサギ肺プロスタグランジンω水酸化酵素(P450p-2)のcDNAをプローブとしてロイコトリエンB_4ω水酸化酵素(P450LTBω)のcDNAクローニングを行い本酵素の一次構造を決定した。cDNAの塩基配列より推定されるタンパク質の分子量は59,805で,520のアミノ酸残基よりなり,C末端近くにシトクロムP450によく保存されている配列を含んでいる。このcDNAを用いて酵母に発現させたところ,酵母ミクロゾームはロイコトリエンB_4のω水酸化反応を活発に触媒し,0.71μMのKm値を示した。本反応にはNADPHの存在が不可欠で,一酸化炭素,αナフトフラボン,メチラポン,SKF525Aによりそれぞれ67%,58%,37%,16%の阻害がみられた。またウサギ肺プロスタグランジンω水酸化酵素のモルモット抗体によつても反応は阻害された。さらにノーザンブロット解析の結果,本酵素のmRNAはヒトの好中球に特異的に発現していることが示された。つぎに本酵素のアミノ酸配列を他のP450と比較したところ,P450遺伝子4ファミリーに属するP450とは31〜44%の相同性を示す一方,4ファミリー以外のP450とは25%以下の相同性しか示さなかった。そこでロイコトリエンB_4ω水素化酵素はP450遺伝子スーパーフアミリーの中で,4フアミリーに属するが,新しいサブファミリーの一員であることが明らかになった。本研究の結果は炎症過程における本P450の役割を解明する上に貢献すると考えられる。最近,米國の研究者により,ラツトにアセチルアミノフルオレンを投与してつくられた肝腫瘍中に我々のP450と構造が類似するP450の発現誘導が報告された。今後種々のヒトのガン組織とロイコトリエンB_4ω水素化酵素の関連性についても解明したいと考える。
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