G蛋白質のうち脳に高濃度存在するGoのαサブユニット(Goα)は、異なるスプライシングにより2種類発現し、GoAα、GoBαと呼ばれる。2種類のGoαはC末端側の3分の1が異なっている。この領域には受容体および効果器と相互作用する部位があると報告されており、両サブタイプは機能的に異なる可能性が考えられている。本研究は、これらのGoαのサブタイプの分布や機能的差異を明かにする目的で行い、以下のような成果を得た。 1)GoAαとGoBαの特異抗体を作成し、これを用いてGoαの両サブタイプの組織分布を比較した。GoAαは脳に圧倒的に高く、神経組織により特異性が高いと考えられた。一方、GoBαは広い組織分布を示し、脳、脳下垂体、脂肪組織に多く存在していた。さらにラットの発育に伴うこれらの脳内濃度変化を検討すると、両者共上昇を示したが、GoBの方が遅れて上昇した。これは両サブタイプの脳における機能が異なることを示唆している。 2)A_1アデノシンやムスカリン性アセチルコリン受容体がGoのサブタイプとどのような親和性で共役するかはまだ知られていない。そこで、精製した両受容体をGoAまたはGoBと再構成し、それぞれのアゴニスト結合の親和性を求め共役の指標とした。A_1アデノシン受容体は、GoAとより強く共役した。対照的にムスカリン受容体はGoBとよりよく共役することが判明した。私達は以前、GABA_B受容体はGoA、GoB両者と同程度の強さで共役することを報告したが、これらの結果から、各受容体はGoの両サブタイプと独自の選択性で相互作用をしているものと考えられる。さらに、Goの両サブタイプは異なっているC末端側3分の1に受容体を認識する部位をもつものと考えられた。
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