研究概要 |
Na^+/H^+交換輸送体(NHE1アイソフォーム)は様々な増殖因子シグナルおよび浸透圧変化や細胞伸展刺激等の機械的シグナルに反応して活性化される。本研究では、活性化の分子機構を明らかにするため、カルモデュリン(CaM)と輸送体との相互作用を検討した。その結果、i)NHE1は高親和性Ca^<2+>/CaM結合タンパク質の一つであること、ii)輸送体細胞質ドメインのアミノ酸残基636-656(A)と656-691(B)の領域にCaMに対する親和性の異なる(それぞれ20nM,350nM)二つの結合部位が存在することが明らかになった。CaM結合部位の生理的役割を明らかにするため、A領域に変異を導入しCaM結合能を失ったいくつかのタンパク質を繊維芽細胞で発現させてその機能を調べ、次の結果を得た。変異導入により、i)交換活性のpH_i感受性が増加し、タンパク質が恒常的に活性化状態になること、ii)Ca^<2+>イオノフォア添加に伴う細胞内Ca^<2+>上昇による活性化が消失すること、iii)増殖因子および高浸透圧刺激による細胞内アルカリ化の程度がそれぞれ50%,80%阻害されることがわかった。以上の結果は、CaM結合部位はそれ自身“pHセンサー"に対して阻害作用があり、細胞内Ca^<2+>増加によるCa^<2+>/CaM結合に伴って阻害作用が解除され、その結果輸送体が活性化されるというメカニズムによって説明できる。さらに今回の結果は、このメカニズムが細胞外シグナルによる活性化に関与することを示唆している。恐らくCaMは細胞外の異なったタイプのシグナルを輸送体の“pHセンサー"に伝達する重要な“transduce"の一つとして機能しているであろう。
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