シャトルベクターを用いて、マウス細胞とヒト細胞におけるに紫外線によって起こる点突然変異の種類と頻度を比較することを目的とした。pYZ289(7.6Kb)とpZ189(5.5Kb)は共にsupF遺伝子、pBR322複製点、アンピシリン低抗性遺伝子を持つ。pYZ289はポリオーマウィルスのT遺伝子と複製点を持ちマウス細胞と大腸菌で複製が可能であり、pZ189はSV40のT遺伝子と複製点を持ちヒト細胞と大腸菌で複製が可能なシャトルベクターである。 マウスHL18細胞から回収した紫外線照射pYZ289の生存率は、ヒトの除去修復能を欠くXP-A細胞から回収したpZ189の生存率より有意に高く、ヒト正常細胞と同程度であった。紫外線誘発突然変異率は、XP-A細胞から回収したpZ189の変異率よりも有意に低く、ヒト正常細胞同程度であった。 約60個のUV誘発突然変異体のうち、トランジション変異が54%、トランスバージョンが46%であった。全塩基置換のうち49%がG:C→A:Tの変化であり最も多かった。G:C塩基対での突然変異は全塩基置換のうちの70%であった。以前に我々はXP-A細胞におけるG:C→A:Tトランジションの頻度がヒト正常細胞より有意に高いことを報告しており、マウス細胞におけるこれらの値はXP-A細胞とは有意に異なり、ヒト正常細胞での値に近かった。 以上の結果、マウス細胞はヒト正常細胞と比ベてDNA修復能が低いにもかかわらず、紫外線誘発突然変異の種類と頻度は、修復を欠損するXP-A細胞よりもヒト正常細胞のそれに近いことがわかった。
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